持ち歩き用佩刀万年筆として勧めたい2本

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 武士が普段腰に帯びた刀を佩刀と呼ぶことにちなんで、常に身につけて持ち歩く万年筆を自宅でメインに使っているものと区別して佩刀万年筆と呼ぶことにしたい。
 今回は実際に使っている万年筆を紹介したい。

万年筆を持ち歩く利点

 今時万年筆を使う、ましてや持ち歩いて普段使いするというのは趣味以外の何物でもないが、趣味性のない生活なんておもしろくない。

  心にゆとりを与えてくれる道具をひとつかふたつ持っているということはストレス社会を生きていく上では大事なことではないかなどと思うわけだが、実は実用性としても他の筆記具にはない利点がある。

 ニブ(先っちょ)の調整にもよるが、万年筆での筆記には筆圧がほとんどいらないので、立ち書きなど不安定な状態での筆記の際は、万年筆が最も書きやすい。

 愛用しているトラベラーズノートは立ち書きしにくいと言われるが、万年筆を使うと格段に書きやすくなる。もちろんこの効果はあらゆるノートや手帳でも表れるものなので、興味を持たれた方は試していただきたい。

 

最強の佩刀万年筆 キャップレス マットブラック

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 トラベラーズノートにセットして常に持ち歩いている万年筆がパイロットのキャップレスマットブラックである。

 その名の通りキャップがないキャップレスシリーズは持ち歩き用としては最高の万年筆と言えるだろう。

 三島由紀夫の愛用万年筆はモンブランと言われているが、外出や取材時に使用していたのはキャップレスの当時のモデルだった。市ヶ谷での自決事件の前にそのキャップレスを知り合いの和菓子屋に預けたという。このエピソードから佩刀という言葉を想起したのだが、実際にキャップレスを使ってみると外出時でこれほど使い勝手がいい万年筆はないとすぐにわかるはずだ。
 中でも真鍮軸につや消し黒で塗装されたのマットブラックはその重み、質感で一度持てば手放せない魅力を秘めている。

 しかしそれ以上にこの万年筆の魅力は何と言っても経年変化だろう。つや消し黒は使用し続けるに連れて次第に独特の光沢を帯始める。さらに使い続けると塗装が剥げ地の真鍮が見えてくる。この剥げ方は使用者の癖や使用感が如実に反映されるため、使用するほどに所有者に馴染む実感がある。この感覚は同じような塗装を施されていたフィルム時代のカメラに似ている。

 もし、持ち歩き用の万年筆を探しているのなら、これを候補にすることを強くお勧めする。

 

 

そっと忍ばせて持ち歩けるリリプット f:id:iidabashi:20180116035343j:image

  2本目も真鍮軸の万年筆である。わずか9cm強しかないリリプットだが、その小ささゆえ、どこにでも忍ばせておくことができる。筆者の場合は財布の小銭入れに常に入れていて、筆記具が急に必要な時などに重宝している。

 キャップは使用時に後部にねじ込めるため、外での使用時になくす心配がなく、またこの状態にすると軸が程よい長さになるため短さによる使いにくさも解消される。
 リリプットの軸もまた経年変化を楽しめる。真鍮軸共通する味の良さである。

KAWECO カヴェコ リリプット 万年筆 ブラス

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