うちの子がADHDかもしんないと言われ

  東京で久々に大雪が降りましたね。

  僕が所属する道場も休みになったわけですが、連絡網が回りきらず、道場まで来てしまった少年部の子もチラホラいました。子供たちは稽古がない分雪にまみれて遊びまくっていました。

 低学年の子供にはお母さんが同伴することが多いのですが、そのうちのひとりは古い知り合いでかつての飲み仲間でした。

 母親デビューしてから飲みの場からは引退してしまいましたが、子供がちょっと大きくなってから道場に入会させてくれたこともありちょこちょこ会う機会がありました。

   さて子供が雪で狂ったように遊んでいるのを見ながら「うちの子たぶんADHDっていうの?あれじゃないかと思うんだけど」と言ってきたので話を聞いてみると集中力がない、注意力が散漫などということを言ってきました。

  そんな程度かよと思いつつも、僕自身高校生の頃この疑惑で病院に行かされたことがあり他人ごとではなかったのでちょっと昔話をしてみました。

 

 当時、県内で上位大学進学率で五本の指に入る高校に通っていたのだが、まるで勉強に興味が持てず某文化系部活道にすべてを注ぎ込んでいた。作品を出せば賞を取るので学校としては全校生徒の前で表彰したいところだが、あまりに勉強しないので表彰も棚上げになっていた。トロフィーだの賞状だのにはまったく興味なかったのでそれを気にしたことは一度もなかった。
そんな俺を見かねた担任に「お前、頭の病気なんだよ」と度々言われるようになり、俺もだんだん自分は病気なんだと思うようになっていった。

 それからしばらくして担任は親に「ひょっとしたら脳に病気があるかもしれないから検査させた方がいい」と勧めた。当時はADHDという言葉は使っていなかったと思う。
 そんなわけで勧められた病院に行ったわけだが、まずこれまでに通院した病院とあまりに違う内装と設備にかなり戸惑ったことを覚えている。
 診察は何かIQテストのようなペーパーテストをやらされ、そのあと先生からの質問に答え、最後に怪しげな機械で脳波の検査を受けた。この脳波の検査ではガッツリ眠ってしまい実際のところどれくらいの時間が過ぎたかまったくわからなかった。
目を覚ますと先生が「この検査であんなに寝たのは君が初めてだよ」と笑いながら検査器を外してくれた。
 こんな感じで眠ったりはしたもののまだ16歳の子供だったので検査中はかなりビビっていた。
「先生、俺病気なの?」
 この質問はなぜか鮮明に覚えている。
 すべての検査が終わった後、先生はこう言った。
「君のような子を病気という人もいるかもしれないし、薬を飲んで矯正するべきと言う人もいるかもしれない。でも先生はこれくらいで病気とは思わない。ひょっとしたらこの個性のおかげで大人になって他の人ができない仕事ができるかもしれない。それはとてもすばらしいことだと思う。」
 そう言われてすごく気持ちが楽になったことを覚えている。
 翌日クルマで登校中の担任を見つけ、駆け寄ってサイドガラスを叩いて「病気じゃないってよ!」と叫んだ結果、後で職員室に呼び出されたのだが、それはまた別の話。

 

「....っちゅうわけで本当に病気かもしれんけど、たんに変わってるだけかもしれないから安易に病気とかいうなよ?本当にそういう病気かもと思ったらボヤかないで即検査させろ。お前はたぶん病気とかっていうの子供はスッゲー傷つくんだぞ。それに先生が言ってくれたように俺は人がやらない変わった仕事に就くことができただろ。子供の個性は大事にしろよ」

といい話をした気になっていたら、

「えーっうちの子あんたみたいになるのヤダw」

 うん、それはわかります。